2009年6月4日木曜日

ライ麦畑の冒頭一文 村上訳



 まずはサリンジャー原著の冒頭一文。

If you really want to hear about it, the first thing you'll probably want to know is where I was born, and what my lousy childhood was like, and how my parents were occupied and all before they had me, and all that David Copperfield kind of crap, but I don't feel like going into it, if you want to know the truth.


 次に村上訳を見る。[村上春樹、2006 p.5]

こうして話を始めるとなると、君はまず最初に、僕がどこで生まれたとか、どんなみっともない子ども時代を送ったかとか、僕が生まれる前に両親が何をしていたかとか、その手のデイヴィッド・カッパフィールド的なしょうもないあれこれを知りたがるかも知れない。でもはっきり言ってね、その手の話をする気になれないんだよ。

 面白いのは出だしの違いだ。野崎訳では、「もしも君が、ほんとにこの話を聞きたいんならだな、」だった。原文に「忠実」で、学校教育で習った和訳としては素直に理解できるだろう。しかし村上訳は、「こうして話を始めるとなると、」。もしかしてある人はこれを見て、村上訳は原文とおおいに違うとちゃぶ台をひっくり返すかもしれない。

 しかし、"If you really want to hear about it," は、「特別」改まった言い方ではない。日常でサクッと使われる場合もあるし、ちょっと溜め気味に改まったカンジで言うこともある。ようはホールデンが、作中随所に見られるように、強調するためにおおげさに言ったり、大事を軽くいいのけたりしているのと同じだ。
 
 次回はカッパフィールドなど詳細を見ていこう。



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